本当にあった特殊な遠距離恋愛

私が夫と知り合ったのは学生時代。
大学卒業まではごく普通の恋人同士のお付き合いでした。

卒業後私は就職のため実家のある長野県に戻りました。
彼も仕事のため実家のある宮城県へ。
彼の仕事ははとある伝統工芸家の弟子でした。
これはもう普通のサラリーマンとは全く違う仕事です。
師匠の家の近くに下宿し、毎日工房に通い
師匠の仕事を手伝いながら技を覚えていくのです。
休みはすべて師匠のスケジュール次第。
彼が弟子入りした工房の場合は定休日はなく
「じゃあ明日は休んで」と言われた日が休みなのです。
これでは私も彼と休みを合わせるなんて全くできませんでした。

時は1990年代半ば。
まだ携帯電話もインターネットも
ごく一部の人しか使っていませんでした。
二人の連絡手段はもっぱら手紙と電話。
私は毎週のように手紙を出していましたが
彼の方は早朝出勤・深夜帰宅の毎日なので
返事を書いている時間もない感じでした。
私の方も次第に手紙を出す頻度も減り
仕事が忙しくなったこともあって
一か月に一回出すくらいになっていました。
彼の下宿に電話はなかったので
こちらからかけるのは無理。
だいたい月に一度彼が公衆電話からかけてくる時だけが
二人がまだつながっていると確認できる瞬間でした。

就職一年目の夏休みに奇跡的に二人の休みが合い
一度だけ会うことができました。
その後はなかなか会う機会を作ることができず
結局4年近く手紙と電話だけの遠距離恋愛が続きました。

遠距離恋愛は乗り越えるのが大変とか続かないとか言われますが
全然そんなことないと思います。
もちろん会いたい時に会えませんから
泣きたい気持ちになることもありますが
大事なのは心の底でそれでも相手とつながっていたいと思うかどうか
その一点だけです。
私も彼もその部分が揺らぐことがなかったのが
遠距離恋愛を乗り越えられた理由だと思います。
私にとって彼は友人かつパートナーとして
唯一無二の存在だと思っていたからこそ
距離は関係なかったのです。